銀賞 アンモナイト

近畿大学附属中学校 3年 中嶋 梨乃

 皆さんはアンモナイトという生き物を知っていますか。アンモナイトとは、古生代シルル紀末期から中生代白亜紀末までの、およそ三億五千万年の間で海洋に広く分布した、イカやタコなどと同じ頭足類です。アンモナイトは、卵からふ化した直後の殻の直径が一ミリメートル程度で、密度は海水よりも低かったと推定されています。これは、ふ化直後は海に浮かぶ浮遊性の生態であったことを意味します。この浮遊期間中にプカプカと浮かびながら海の流れにまかせて世界中へ広がったと考えられています。また、アンモナイトの軟体部分には他の頭足類と同じように漏斗と呼ばれる吸い込んだ海水をジェット噴射する器官があったと考えられているため、ある程度の移動能力があったことも生息域を広げる一因だったでしょう。これらのことから、アンモナイトの化石が世界中でみつかっていることには、彼らの生息場所・生態・そして形態的特徴の全てが深く関わっていたと考えられます。
 ところで、皆さんはアンモナイトの化石を見たことがありますか。私は今年の夏休みに福井県の恐竜博物館で実物を見ることができました。恐竜博物館には恐竜の化石だけでなく貝の化石や植物の化石も展示されており、その中にアンモナイトの化石がありました。そして、その場所では丁度アンモナイトの化石について係の方が説明しておられるところでした。係の方が最後に、「アンモナイトの殻のつくりは少し変わっているので興味のある方はぜひ調べてみて下さい。」とおっしゃいました。
 そこで、私ははじめにそのことについて調べることにしました。アンモナイトの殻は中心のヘソ部分から外側に成長していき、カタツムリのような渦巻き状の形を形成します。しかし、アンモナイトの殻の巻き方は様々で、殻の表面の装飾も種類によって違いがあります。この違いは、沿岸あるいは沖合などの生活場所や、遊泳性・浮遊性の生活スタイルの違いなどを示していると考えられています。そして内部は、複数の部屋から構成されています。複数の部屋は二つの部分に分けられます。一つ目は殻の巻き終わりの太いところで住房といいます。住房は「住む」という文字が入っているように、アンモナイトの軟体部分が収まる部分です。そして二つ目は、殻の巻き始めで中心のヘソ部分から巻き途中までのことで気房といいます。気房は、軟体部分が収まっていない部分です。これらのことは現在でも見ることができる化石から分かることです。
 次に、およそ六千六百万年前まで生きていたアンモナイトの生活について調べることにしました。食性は肉食で、比較的動きの遅いエビやカニなどの甲殻類を食べていたと考えられています。その根拠として、アンモナイトにはアプチクスと呼ばれる硬い組織があり、それはイカやタコの口の部分にある顎片に良く似ていたそうです。そのことから、イカやタコと同じように甲殻類の硬い殻を顎片で割って食べていたと考えられています。また、個体数が非常に多かったことから、大型捕食動物の獲物にもなっていたようです。長い間繁栄したものの、生態系の頂点にいたわけではなく、常に中間あたりに位置して生命をつないでいました。これらのことは、現在の研究で明らかになっているものを根拠として考えられる例の一つです。
 最後に、イカやタコ、オウムガイとアンモナイトの関係について調べました。アンモナイトはオウムガイ類から分岐したと考えられています。オウムガイはおよそ五億年前のカンブリア紀に姿を現し、その後いくつかの種に枝分かれしました。そのうちの一つがアンモナイトや現在のイカやタコの祖先となりました。昔は姿が似ていることから、最も近い種はオウムガイだと考えられていました。しかし現在では、実はオウムガイよりもイカやタコとの関係の方が近いということが分かっています。
 アンモナイトについて調べてみて、自分で思っていたよりも広い範囲に生息していたことにとても驚きました。そのため、アンモナイトが地層の年代を示す「示準化石」にとても最適な生き物だということが分かり、アンモナイトの重要性を改めて認識できました。

2019年12月01日