佳作 小さなプラスチックと大きな環境問題

大阪教育大学附属平野中学校 2年 安田 有吾

 近年、プラスチックによる海洋汚染の問題が深刻化しています。数年前までとても綺麗だった海岸に、プラスチックごみが目立つようになってきたのは残念で仕方がありません。海のプラスチックごみについて調べてみると、既に世界の海には合計でおよそ一億五千万トンのプラスチックごみが存在しており、毎年八百万トン(重さにして、ジャンボジェット機五万機分相当)が新たに流入していると推定されているそうです。このままプラスチックごみが増え続ければ、二〇五〇年までに、海洋プラスチックごみは魚の量を上回るという衝撃的な予測もされています。
 僕は一年ほど前に、当時高校生だったスペイン人の少年、ボイヤン・スラットが考案したごみ回収システムを使って始めた、海洋ごみ回収プロジェクトというものを知リまた。このプロジェクトを知るきっかけとなったのは、ナショナルジオグラフィックという雑誌の海洋汚染についての記事でした。この海洋ごみ回収プロジェクトは、ボイヤン・スラットが設立した、NPOのオーシャン・クリーンアップが進めています。ボイヤン・スラットは、十八歳の時にこの回収システムのアイデアを発表しました。彼のプレゼンテーションは、世界の人々の心を動かし、クラウドファンディングで二百万ドルの資金調達に成功したのです。
 ボイヤン・スラットが考案した海洋ごみ回収システム「ウィルソン」は、太平洋上にある「太平洋ごみベルト」と呼ばれる世界最大のプラスチック集積地のごみを減らすために開発・設計されたもので、六百メートル長のバリア(筒状のもの)が海面に浮かぶようになっています。バリアは上から見るとU字型になっていて、外部のコントロールなしに波と風の力で自走します。バリアの下には、三メートルのカーテン状のシートが取り付けられていて、ごみを逃さず収集する仕組みになっています。ごみは、バリアの中央に集まり、船で回収するようになっています。まだ実験段階にありますが、頑張って実現してほしいと思います。
 しかし、僕は疑問に思ったことがひとつありました。それは、マイクロプラスチックが回収できるのかということです。プラスチックごみの中でも、特に現在深刻になっているのが、このマイクロプラスチックの問題です。海に投棄されたプラスチックごみは、やがて波や太陽光などにより微細なマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれます。もちろん、人間も例外ではありません。マイクロプラスチックが、人間を含む生物の体にどれだけの影響があるかは分かっていないですが、少なくとも、元々自然環境に存在しなかった物質なので、慎重に捉え、考えていかなくてはいけないと思います。また、これらのプラスチックが自然分解されるのには、多くが数百年から数千年かかります。しかし、このような回収システムの仕組だと、マイクロプラスチックは回収できないのではないか、と僕は思いました。調べてみると、やはりマイクロプラスチックを回収することは不可能に近いようで、日々マイクロプラスチックは増えていきます。回収システムの開発は時間との戦いになっているようです。
 これからも、毎年八百万トンのプラスチックごみが海へ流入し、流入したプラスチックごみは、マイクロプラスチックとなっていきます。ですが、少しでもこの「八百万トン」という数字を減らせるのではないのでしょうか。いくら直接海のごみを減らすのにも、限界があると思います。なぜなら、単純計算で一分間で約十五トンのプラスチックが海へ流入していることになるからです。一分間に、十五トン以上のごみを回収するには無理があるとは思いませんか。世界中の全ての人がプラスチックを消費している訳ではなく、海にごみを投棄している人にも偏りがあるものの例えば、七十四億人がそれぞれ年間百グラムずつでもプラスチックを節約し、海への流入を減らすと、年間七十四万トンのプラスチックの流入を防ぐことができます。百グラムのプラスチックの量を具体的に例えると、たったのペットボトル約四本分です。このように、一人一人の少しの我慢と努力が積み重なると大きな結果として帰ってくるのです。ボイヤン・スラットと、オーシャン・クリーンアップのように、これまでに海に流出させてしまったものを減らすことも、とても大切です。しかし、今もプラスチックは海へ流入しています。その流入を食い止めるのに、一番手っ取り早い方法は、一人一人が気をつけることです。『塵も積もれば山となる。』これを意識して、少しずつでもプラスチックを使わないように呼びかけ、実行していきたいと思います。

2020年12月02日