佳作 波の向こうで守られる海の安全

長岡京市立 長岡中学校 2年 山本 修輔

 二0一八年一月一日、僕がお正月気分に浸りながら新聞に目を向けたとき、ある記事が目に入った。記事からお正月にも北日本の洋上を哨戒している人々がいることを知った。彼らが働いているのは、海上自衛隊。彼らはいつでも日本の海で警戒を行っている。
 海上自衛隊に興味を持ったきっかけは、家族で佐世保へいったときに沢山の所属艦艇を見たことだ。それ以来、僕は新聞やニュースでその活動に注目するようになった。
 そして今年の春、僕は海上自衛隊横須賀基地へ行くことになった。その頃には、ある程度艦を識別できるようになっていたが、調べていたほどたくさんはなかった。不思議に思って訪ねてみると、いくつかの艦は出港し、別の艦も出動に備えていることが分かった。自衛官は大変だと聞いたことがあったが、やはり国を守るということは楽ではないのだなと実感した。一方で、何かあったらいつでもすぐに対処出来る自衛隊があることをとても心強く感じた。
 このように、僕たちの知らないところで日本の海の安全は守られているのである。例えば、災害派遣である。東日本大震災や僕も体験した大阪府北部地震では艦艇や航空機を派遣した。北朝鮮の弾道ミサイルへの警戒はみなさんも聞いたことがあるかもしれない。また、潜水艦は水中に潜んで他国の艦の行動を監視したり情報収集を行ったりしているが、乗組員は、他国に察知されないために家族にも出港の日時を告げないそうだ。さらにソマリア沖海賊への対策部隊派遣でも、日本や外国の船を護衛した。ソマリア沖海賊のことは日本とは関係がないと考える人もいるかも知れないが、海賊行為が頻繁に起こるソマリア沖やアデン湾には、年間一六〇〇隻もの日本系船舶が航行している。それらの船舶を守ることは日本人の生活を守ることにもなるのだ。
 みなさんはこの活動の全てを知っていただろうか。僕は、日本周辺での武力衝突などはないので海上自衛隊の出番はあまり多くないのだろうと思っていたのでこの活動の多さには驚いた。僕たちの平和な暮らしも、僕たちが知らないうちに海上で活動している海上自衛隊に守られたものであるかも知れないと思うと、少し彼らを身近に感じた。
 ところで、ソマリア沖海賊への対策部隊派遣では、護衛艦に海上保安官も搭乗している。その理由を知るためには、海上自衛隊と海上保安庁の違いを知る必要がある。
 海上自衛隊は一九五二年、海上保安庁傘下の海上警備隊として発足し、保安庁傘下の警備隊に発展した。そして、一九五四年、防衛庁傘下の海上自衛隊に発展改編された。また、海上警備行動の発令によって他国の軍艦、軍用機に対処する。
 それに対して、海上保安庁は洋上治安維持のために、一九四八年に創設された。任務は主に民間船舶を対象とした警察、消防である。
 つまり、海上自衛隊は他国の軍艦、軍用機に海上警備行動の発令によって対処するが、海上保安庁は民間船舶に対して警察、消防として対処する。だからこそ、逮捕などの司法手続きを行える海上保安官がソマリアに派遣されているのである。
 海上保安庁は、他にも幅広い活動を行っている。例えば、密航や密漁、密輸の取り締まりを行ったり、海難救助を行ったりしている。他にも、海洋観測や天文観測を行って海に関する情報を提供している。さらに、灯台、ブイを運用して、海上交通の管理を行っている。僕は、海には道路がないのに交通の管理を行わなければならないということが分かり、驚いた。また、犯罪行為や武力侵攻などからだけでなく、交通などの面でも海の安全が守られているということを初めて知り、とても重要な職業なのだろうと考えた。
今まで、海上自衛隊と海上保安庁の違いについて述べてきた。では、これら二つの組織に共通することは何であろうか。僕は、どちらも海の安全を守るために目立たないところで尽力し、間接的に僕たちの安全で安心できる暮らしを守る一翼を担っていることだと思う。そう思うと、今まで彼らにあまり関わりがなかった人も彼らを少し身近に感じたのではないだろうか。争いも、犯罪もない、平和な海、平和な世界を作ることができればそれが一番良いが、残念ながら今はそうとはいえない。そんな今、海を通じて世界と結びついている日本人の暮らしを守る人々の中に、海上自衛隊、海上保安庁の人々が含まれないはずはないだろうと僕は考えている。海との関係が深い日本の国民だからこそ、そんな海の安全を守っている組織や人々について少しでも関心を持っているのもよいのではないだろうか。それが、より平和で安全な海をつくるための第一歩になると僕は思う。

 

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2018年12月01日