佳作 漁業に起こる変化

帝塚山中学校 1年 山口 純平

 日本は四方を海に囲まれ、水産資源に恵まれた国だ。そのため、日本は昔から漁業が盛んである。ところが、ここ数年、漁業にある変化があらわれている。その主な原因は、前世紀から注目されている。「地球温暖化」である。この影響により、海水の温度が上昇し、魚介類の生育地が大きく変化している。
 地球温暖化などにより、近年、局地的な豪雨の増加・夏期の異常高温といった異常気象が多くなっている。最近の例でいえば、平成30年7月の台風7号による西日本豪雨や、その一年前の台風3号などによる九州北部豪雨は甚大な被害をもたらした豪雨災害だ。どちらも多くの死者を出した。
 夏期の異常高温では、今年の7月の猛烈な暑さだ。気温が35度以上の猛暑日が続き、多くの熱中症患者を出した。自分の身にも今年の学校の行事、臨海学舎の途中で、熱中症と思われる症状が出た。そんな、連日死者を出す殺人的な暑さは8月に入っても終わらなかった。その夏の高い気温の影響で、海水温も上昇している。平成25年8月の日本近海の平均気温は平年より、昭和60年以降で最も高くなる。平成15年と平成25年の海水温を比べると、平成15年、日本海の北緯40度あたりから北は比較的低かったが、その10年後、日本海は北から南にかけて、全て高温状態となった。熱しにくい海がたったの10年でこれほど温度が上がるのが不思議だ。
 では、このような海水温の変化で、漁獲量にどのような変化がでてくるのだろうか。主に二つの変化が起こる。
 一つ目はプランクトンの減少だ。海面の温度が上昇すると、その水は軽くなり、海の表面に止まろうとする。すると、海面付近の水と深層の水が混ざりにくくなり、深海の栄養分が海面付近に行き渡らなくなる。このため魚のエサとなるプランクトンが減少し、深海の魚介類が減少する。
 二つ目は、海水の温度により、生育域が変わる魚種の動きの変化だ。魚には、高水温を好む魚種が生息。回遊域を北上させる一方で低水温を好む魚種は、日本周辺水域まで南下しなくなる現象が発生した。例えば、暖水性のブリは海水温の上昇により、年々北のほうでも獲れるようになり、漁獲量は増えていく。一方、冷水を好むサンマは南下を始める8月ごろになっても太平洋の北部にとどまるといったケースが増えている。以前釣り好きの友達から「去年まで釣れなかったものが今年は釣れた」というような話を聞いたことがある。その時は原因はよく分からなかったが、海水温の上昇が関係していたかも知れない。
 海洋の環境変化と大気の状態は深い関係がある。例えば、エルニーニョ現象とラニーニャ現象だ。エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が一年程度続く現象だ。海面水温が平年より低い場合は、ラニーニャ現象という。エルニーニョ現象になると、太平洋の赤道周辺で海水温が高くなり、ラニーニャ現象になると、その部分は海水温が低くなる。
 エルニーニョ現象が起こる原理は、太平洋の熱帯域で常に吹いている東風、貿易風が普段より弱くなり西部に溜まっていた暖かい海水が東の方へ広がるとともに、東部では、冷たい水の沸き上がりが始まる。このため、海面水温が高くなる。このエルニーニョ現象が起こると、日本付近では夏季に太平洋高気圧が北に張り出しにくく、気温が低く日照時間が少なくなる。また、西日本の日本海側では降水量が多くなる。冬は、冬型の気圧配置、西高東低が弱まり、気温が高くなる。
 魚が水揚げされる量が減ると、当然、一ぴきあたりの値段が上がり、消費者にも影響が出てくる。今後、今まで以上の想定できないような異常気象が起こると、漁業にも大惨事が待ち受けている。魚介類の自給率は、平成24年の53%が最低で、最近は少しずつ増してきてはいるものの、それでも60%以下に過ぎない。そのような状況の中、海水温の変化などで漁獲量が減ると、外国産のものにたよることになる。それに関して解決策はないのだろうか。
 今も、世界の異常気象が原因で、少しずつ漁業のかたちが変わっていっている。

 

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2018年12月01日